ありがとう「葉っぱミカン」ちゃん

去る7月19日、我が家の金魚さんが天に召されました…。

名前は「葉っぱミカン」

命名したのは3歳の頃の娘です。


もともとは僕の妹が子供のころ縁日で掬ってきた金魚のうちの1尾でした。

こういう「小赤」と呼ばれる一般的な金魚。

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※こちらの写真はフリー素材のPAKUTASO様からお借りしたものです。


ほかの金魚たちはみなすぐに亡くなってしまう中1尾だけ生き残り、主に実家の父が世話をしていました。


家内が下の子供を出産するために娘と一緒に里帰りしていた2011年3月11日。東日本大震災が起こりました。


ひとまず揺れが収まってから実家を訪れると、玄関にあった水槽はひび割れてすっかり水が出てしまっており、横たわった金魚が口をパクパクさせていました。

家族は避難できたのでこの金魚も助けたいと思いましたが、急なことなので水槽がありませんでした。昔使っていた古い浴槽が天水桶として庭のすみに置いてあったことを思い出し、急いで金魚を運び移しました。

なにぶん長いことほったらかしにしていた浴槽だったので、中は雨水だけでなく藻がはびこり混沌としていました。金魚は底のほうへ沈み、まれにしか姿を見かけることはなくなりました。

傾いた実家の片づけや仕事の状況整理などで走り回っていたころ、地元は放射線が高い地域と言われ近所の何軒かは引っ越したことも知りました。


我が家でも「移住するのか、残るのか」の話し合いをしましたが、実家の家族はこのまま残ることを選択。

僕も里帰りしている家内と何度も話し合いをして、春までは様子を見ようということにしました。

このままでは家族がバラバラになるかもしれない…そんな風に考えたこともありました。



春になって家内と子供たちが帰ってきました。あの頃の報道を思い出すと、家内はずいぶん不安だったろうと思います。

庭に出た娘が祖父に
「ここに金魚さんがいるの?」
と尋ねていました。
「そうだよ。ほら。」
珍しく水面近くに上がってきた金魚に喜ぶ娘。
「きんぎょさんのおなまえは?」
「あー、名前はつけてないなあ」

「じゃあわたしがかんがえてもいい?」

「いいよ、素敵なお名前つけてあげてね」

そう言われて考えていた娘、すぐ側に夏蜜柑の樹があることに気づき、

「これ、なんのき?」

「これは夏蜜柑の樹」

「じゃあ『はっぱみかん』ちゃん!」

この後から葉っぱミカンちゃんという呼び方が定着しました。


しばらくかかって実家の片付けが終わった頃、そろそろ葉っぱミカンちゃんのお引っ越しをしようかという話になりました。新しい水槽と敷砂利を用意したのですが、気になるのはここ最近葉っぱミカンちゃんを見かけないことです。
(もしや底に沈んでしまって…)
悪い想像を断ち切って浴槽の水を掻き出していきました。
水かさが10分の1くらいになった頃、暗緑色の濁った水の中にヒラヒラと揺れる白い背ビレが見えました。
生きていた!
傷つけないようゆっくり水を減らしていき、網で掬い上げて驚きました。
全てのヒレがまるでレースドレスのように伸びていたからです。

あんな暗い水の底でしっかり成長していたんだ。しかも、こんなに美しく。

僕の中で、葉っぱミカンちゃんは復興と希望を体現した存在になっていました。


我が家にきてから20年と少し。

頭から尾ビレの先まで22.3センチ。


もっと大きな水槽で泳がせてあげたかった。

もっと餌も食べさせてあげたかった。


金魚にして我が家の一員だった、葉っぱミカンちゃん。

家族全員で静かに思い出を語り合いました。

今までありがとう。


最後は花に包まれ、庭の柿の木の根本で眠りにつきました。

今年の秋になったら葉っぱミカンちゃん色の実がなるといいなあ。

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