有川貞清先生の軌跡②

▶ひっかかる症例

明けて翌日、先生は術後の創部点検で患者のもとを訪れました。通常ですと、開腹手術後の創部には膿が見られます。膿が多量にあると創がうまく閉じず、治癒が大幅に遅れることにもなりかねません。そのため膿を取り除き、消毒をし、創部を清潔に保護する必要があるのです。
そこで先生は、
(…膿が無い!)
ことに気付き、改めてこの患者の経過を特異なものではないかと考えたのでした。そのことについて尋ねた先輩医師からは、
「まぁ、そういうこともあるだろうね」
という、素っ気ない言葉が返ってきたといいます。おそらくその方にとっては、
(気にもならぬこと……)
だったのでしょう。しかし、この患者の身に起きた一件――〔痛みが消えた〕ことと、〔膿がなかった〕こと――は先生の心に、
(どうもひっかかる。詳しく調べる必要があるんじゃないか……)
という印象を与えました。
これは、一般には何気なく思える些細なことにも、そこにひとかけらでも疑問があれば徹底的に調べる、という先生の姿勢があったからこそだと思います。
先生は、あの患者の反応が、術前処置として行った〔輸液の大量皮下注射〕をきっかけにして起こったことを思い出しました。
(皮下に注射した輸液の成分に、痛みや炎症を抑える働きがあるとは思えない……)
のである以上、
(注射の刺激が、何らかの理由であの反応を引き起こしたのではないだろうか?刺激を加えることによって、生体には何らかの変化が生じるのではないだろうか……)
先生は、こう考えたのです。
この考えを相談した教授からは、
「それは、君が自分で研究することだ」
と後押しされました。
ここから先生は〔生体が刺激に対して、どのような反応を見せるか〕について、一心に研究していくこととなったのです。


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